№37 EV車を家の電源すると便利に暮らせる

EV車の6kwhの大電力で、電気を自給自足する

6kwの大電力って、すごい!

自宅の太陽光発電で創った電気を、蓄電池やEV車に貯め、家で使う電気を自給自足する。特にEV車を活用することをおすすめするのには理由があります。

蓄電という視点で見たとき、蓄電池とEV車の大きな違いは、最大出力と大量の充電量です。蓄電池の最大出力は3kwまで。それに比べてもEV車は最大6kwまで出力できます。これを家庭で利用する電気で考えてみるとIHクッキングヒーターは、通常は1つのトッププレートの電気使用量が1.5kwほどで、左右両方を使えば3kwを消費します。

太陽光発電が利用できない夜間の場合、蓄電池1台ではここまでしか使えません。一方、EV車の場合は6kwですからIHクッキングヒーターと同時に電子レンジ1.5kw、お風呂あがりのドライヤー1.2kwを使っても電気を買わずにすみます。

ちなみに、一般的な家庭が契約する電気料金の電圧は100Vがほとんどですが、最近の高性能な家電は電圧が200Vでないと使えないものもあります。一般家庭では電気の契約アンペア数が40A以上でないと200Vが使用できません。電気設備を選ぶ際は、契約内容を確認し、利用状況に応じた変更が必要です。

電化製品などでよく見るA(アンペア)V(ボルト)W(ワット)は電気を表す単位です。Aは電流(一度に電気が流れる量)Vは電圧(電気を押し出す強さ)Wは1秒間当たりに消費される電力の大きさを表しています。

№36 金持ち父さんがEV車に乗る理由

EV車の所有で電気を有効利用する

EV車の役割が変わる?

もし金持ち父さんが車を所有するなら、絶対にEV車(電気自動車)です。なぜならEV車はこの先、住宅にとって必要不可欠になるからです。

よく「EV車とガソリン車、どちらがいいか」といった比較をする人がいますが、私からするとこの比較自体が間違いです。そもそも役割が違うのです。ガソリン車は遠くへ行くことを考えた移動手段。いわゆる交通車です。一方、EV車は蓄電されたエネルギーを使った移動手段というよりも、車に蓄えたエネルギーを使った移動以外に有効利用できる生活必需設備としての役割が大きいものなのです。

ガソリン車はスタンドで給油した後は、走行に消費するだけです。そのガソリンを自宅で他のものに給油することはないでしょう。しかし、EV車の場合は、自宅で発電し、自宅で消費することができます。この役割の違いを理解すれば「EV車は街中に充電できる場所が少ない」「走行距離がガソリン車に比べて短い」などという考えも意味がないことがわかるでしょう。EV車はマイホームで使用する電気を自給自足するための大きな蓄電池のようなものです。今後雄、貯めた電気が売れるようになれば、家の資産価値を高めるものとして、さらに存在感を増すことになります。

№35 新たな資産形成ができるFIP制度

電気を日中にしか売れない家、夜に高額で売れる家

FIT制度とFIP制度の違い

JEPX日本卸電力取引所は、電気の売買が行える国内唯一の市場です。JEPXでは、発電事業者による電力の供給と小売業者の予測する電力の需要のバランス調整が行われ、一般家庭で発電した電気も、小売業者を通して市場で売買できます。市場全体で同時同量の原則に対応できるように調整するわけです。現在のJEPXは不安定ですが、長期的に考えれば新たな需給バランスを構築する機会とも言えます。

これまで一般家庭が電気を売るときに利用してきた固定価格買取制度(FIT)は日中に発電した電気を自家消費し、余った分を売るため、日中の電気の需要が多い時しか売れません。晴天時に電気が余るのは家庭も同じなので電力会社ん電気が余り、買い取ってもらえないこともあるのです。電力会社の電気が逼迫するのは夜、暑い日、寒い日など、発電出来ないときや家庭の消費電力が増える時です。この状況を改善するため、国は新たにFIPという制度を導入する予定です。FIPの場合、日中に自宅で創った電気を蓄電池やEV車に貯め、市場の電気が不足している時間に売ることも可能です。今後はEV車が普及し、各家庭の所有数する電力量が増えます。そして、エネルギーの需給バランスが逼迫する電力会社を救済します。

FIP制度は、「フィードインプレミアム(Feed in Premium)」の略で、電気を売買する際に、市場価格に一定の補助額(プレミアム)を上乗せすることで、再生可能エネルギーの普及を支援していくという制度です。

№34 先行きが不安定な電力市場

電気の高騰が家計を圧迫している

今までの電気料金が続くはずがない

日本には北海道から沖縄まで全国に10の電力会社があり、以前はそれぞれが周辺の地域で消費する電力を賄っていました。しかし、2016年に経済産業省は電力会社を発電・送電・売電の3つに分離し、さらに発電所を所有しない新電力会社も参入させてJEPX日本卸電力取引所という市場を作りました。つまり東京にいても愛知県の電力会社と取引できるようになったのです。

しかし、現在の電力市場は残念ながら非常に不安定です。今回のロシアのウクライナ侵攻により、旧電力会社10社の電気は逼迫する状況になりました。自社が必要とする電気まで不足しており、JEPXに安価で電気を卸すことができないのです。そのため倒産・廃業に追い込まれる新電力会社が増え、会社が存続していても電気料金がものすごく高いというのが現状です。新電力会社と契約していた家庭が旧電力会社に戻そうとしても新しく値上げされた料金でなければ再契約できない状態にまでなっています。エネルギー状況を長いスパンで見たとき、今の電気料金がこのまま続く前提で家を建てるのは危険です。電気は電力会社から買うものと思っていることがすでに間違いで、電気を自給自足できない家には誰も価値を感じなくなるでしょう。

株を安い時に買って、高い時に売る。今後は創る電気についてもこの感覚が重要になってきます。電気を自給自足することが最初のステージとして、次のステージは電力を高く売って安く買うことにも挑戦していただきたいと思います。

 

№33 固定価格買取制度(FIT)の抱える課題

自宅で発電した電気をどう活用するのか

家で創った電気をどうする?

2012年にこの制度をスタートした電気の「固定価格買取制度(FIT)」というのは、発電した電気電力会社が一定価格で買い取ることを国が保証する制度です。スタート当初の買取価格は1kwh当たり42円(発電設備10Kwh未満の場合)で、これを10年間保証するというものでした。この価格はかなりの大盤振る舞いで、本来の再生可能エネルギーの普及という目的だけでなく、投資目的で悪用されケるースも多かったようです。結果、売電収入をあてにした投資家が殺到し、2014年には九州電力で消費電力よりも太陽光発電の発電量が大幅に上回り、申請受理を中止するという、九電ショックが起こりました。

その後、買取価格は徐々に値下がりし、2022年度は1Kwh当たり17円、2023年度は1kwh当たり16円。買収期間はともに10年間です。今では当初の買取価格の半分以下に下がったわけです。

2012年にこの制度を利用した人は保証期間10年が2022年に終了します。その後も継続できますが、買取価格は大幅に下がります(2022年1月現在、東京電力の買取価格は1Kwhあたり8.5円。)それでも売電を続けますか? 売電をやめ、夜に家で使う蓄電池などに貯めて有効活用するほうが賢い選択です。

№32 太陽光発電を有効活用する設置方法

創エネの視点から屋根のデザインを考える

太陽光発電に理想の屋根とは?

コロナ禍で朝から晩まで自宅で過ごしていた私は、日の出から日没までの太陽の行路を毎日観察していました。屋根の勾配を計るテンプレートで毎日理想の日射角(太陽光の差し込む角度)調べ、研究をつづけた結果、太陽光発電に最適な屋根の勾配が1年を通してわかってきました。

太陽は、夏至の時にもっとも高い位置になり、冬至の時に最も低い位置になります。そして、1日の中では、日の出と日没の時が一番低くなります。こうした状況を勘案したうえで導きだした答えが、「太陽光発電に理想の屋根は、南西向けの緩勾配にする」ということでした。

太陽光パネルを設置する際に、太陽から直進する「直達日射」の日射角度だけを考慮して「南30度の屋根の傾斜が最も発電する」という定説があるようです。しかし、実際は地球の大気圏外に到達した日射が大気中の分子や浮遊粒子によって散乱して地表に到達する「天空日射」があることを考慮すべきです。よって屋根は急勾配にするよりも、勾配を緩やかにしたほうが全方向からの天空日射を多く受け取ることができます。また、夜の帰宅する時間から消費する電気量は増えますので、日没の太陽が沈む方向である南西に屋根をむけ、発電時間を長くする工夫も大切です。

太陽光発電パネルを設置する際に注意しなければいけないのは、鋼鈑屋根を緩勾配にして雨漏り、暴風、雪害などから家を守り、パネルの寿命を長くすることです。また、台風などの暴風に備え、1枚のパネルを6点固定する備えも必要です。

〇直達日射と天空日射

太陽の日射には「直達日射」と「天空日射」があります。「直達日射」が多いなら、太陽に向いている屋根をできるだけ広く、また急傾斜にした方が多くの日射を受けることができます。日本は「天空日射」が多いため、できるだけ屋根はフラットにするのがおススメです。また、日没の太陽の位置を考慮して南西向けの緩勾配に太陽光パネルを設置した方が発電時間は長くなります。

№31 太陽光モジュールは変換効率で選ぶ

自宅の屋根を発電所として活用する

変換効率20%以上が選択の目安

ZEHは、高気密・高断熱な家で高効率設備を利用することで、できるだけ電気を使わないようにし、そのうえで削減できなかった電気を太陽光発電で補い、電気の消費と供給を実質ゼロにするという考え方です。ここでは、家の屋根で電気を創る太陽光発電のことをお話ししましょう。

太陽光発電は、誰もが、何の資格もなしに家の屋根を発電所にできる唯一の方法です。太陽光発電に用いる「太陽光発電モジュール」と呼ばれるパネルはさまざまな種類があり、価格にも開きがあります。どの製品にするかを検討する際に、必ず確認してほしいのが「モジュール変換効率」です。これはパネル1㎡当たりで太陽光をどのくらい電気エネルギーに変換できるかを示す数値です。

国が推奨するモジュール変換効率は20%以上です。数値が高いほどたくさん発電できるので、数値の高いものを安く設置するのがベストでしょう。私が推奨するのは、1枚のモジュールを構成する最小単位の「セル」をさらに半分にした「ハーフカットセル」を用いたパネルです。従来60枚セルを設置する屋根に120枚のハーフセルを配置します。光を電気に変えるバスバー銅線が9本あることで発電効率が高まり、年間46万円もの収入が得られます。

モジュール変換効率(モジュール公称最大出力(W)✖100)÷(モジュール面積(㎡)✖ 1000(W/㎡)で算出します。モジュール公称最大出力とは、太陽光パネル1枚当たりの発電量のことです。

 

№30 地球にもやさしい、自給自足の家

電気を自給自足することで「脱炭素」社会に貢献する

家づくりで忘れていけないこと

電気を買わず、太陽光発電で自給自足する家づくりは、世界的に動きが加速している「脱炭素」社会の実現に貢献することでもあります。2021年、米プリンストン大学上席研究員の真壁淑朗さんがノーベル物理学賞を受賞しました。真壁さんは世界に先駆けて、二酸化炭素濃度の上昇が地球温暖化に影響するという予測モデルを発表し、その功績を評価されての受賞でした。地球温暖化は私たち一人一人が取り組んでいくべき問題です。家づくりもその例外であってはいけないと思うのです。

一方で、東日本大震災の津波によって福島の原子力発電所が被災し、未だに廃炉作業が続けられています。放射能汚染という二次災害で多くの人が故郷を追われ、戻ることができない人もたくさんいます。こうした人たちの犠牲によって、私たちは原発が未来に多大なリスクを持つ発電所であることを学ばせてもらったのです。

2022年7月、岸田文雄首相は原子発電所を今秋に最大で9基、火力発電の供給能力も10基増やすと表明しました。せめて家庭で消費する電気は自給自足できる家を建てるべきです。積雪で太陽光発電のできない地域ならまだしも、そうでない地域に新築されるなら、電力会社に依存する暮らしから脱却するべきです。

あなたが家を建てるなら、最低限の基準はZEHだと考えてください。現在ZEHのロードマップは、国連気候変動枠条約(COP)により年々厳しくなっています。家から排出されるCO2を削減できる能力が、これからは家の価値を左右します。

〇地球温暖化のしくみ

地球温暖化は、大気中のCO2(二酸化炭素)などの温室効果ガスが増えることで地表の熱が宇宙空間に逃げられなくなり、気温が上昇するという現象です。その影響は、異常気象や自然災害、生態系の変化などさまざまなところに及んでいます。

№29 オール電化住宅を進化させたZEHの家

値上がりする電気料金にどう対処していきますか?

電気は、創って、貯めて、使う

オール電化住宅とは、IH調理器やエコキュート、省エネ冷暖房といった住宅設備を全て電気で賄う住宅のことです。「そんなに電気を使ったら電気代が高くなるのでは?」と、不安に思う人がいるでしょうが、ガスを併用すれば、ガスの基本料金も別途かかるのですから、光熱費全体で考えれば、オール電化の方が有利でしょう。ただ、現状の電力事情では深夜電力も値上がりしています。そのため、オール電化住宅の場合でも、どのように家の電気を賄うかは、しっかり考える必要があるのです。では、どうすれば? その答えとして登場したのが、自分たちが使う電気を自分たちで創って補うZEHという発想でした。

しかし、2012年以降に自宅で太陽光発電を利用する家がずいぶん増えたものの、太陽光で発電できるのは日中だけ。夜はやはり深夜電力を買わなければなりません。そこで重要になるのが自宅で創った電気を「貯める」という発想です。日中に創った電気を蓄電池やEV車に貯めて、自分たちの使う電力を自給自足できるようにする。このような概念で造られる家がスマートハウスであり、私がおススメしている「Smart2030令和の家」なのです。

ZEHやスマートハウスを実現するには、家を高気密・高断熱にすること、パッシブデザインや外付けブラインドなどを活用し、高効率な設備によって自宅で消費する一次エネルギー(照明や換気、エアコンなど)を省エネ化するといった工夫も必要です。

〇ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

高気密・高断熱の家に省エネ性能の高い設備を採用することで、消費電力を極力抑える。その上で、必要な電気を自宅の太陽光発電で賄う。自宅で消費する電力をプラスマイナスゼロにするというのが、ZEHの考え方です。そして、自宅で創った電気をより有効に活用するためには「貯める」という機能が重要になります。

 

№28 深夜電力も、もはやお得ではない!

原子力発電と同時同量のルールから生まれた課題

創った分だけ消費するルール

もともと電力会社は自社で発電と送電を行い、電力を販売していました。電気には、発電した電力と消費する電力を一致させる「同時同量」という原則があります。なぜなら電気は貯めておくことが出来ず、発電した量を同時に消費しないと停電するからです。

東日本大震災以前の日本では、原子力発電が電力供給の大きな柱になっていました。ところが、原子力発電には発電量を調整できないというデメリットがあり、安定的に電力を供給するには、常に電気を消費しなければなりません。人が電気を使わない深夜時間帯にも何らかの形で電気を消費する方法が必要だったのです。

そこで登場したのが、「オール電化住宅」です。オール電化住宅では、深夜に給湯器のお湯を沸かして貯湯タンクを満杯にし、そのお湯を翌日利用します。そして、オール電化住宅をさらに普及させるため日中より料金の安い「深夜電力割引」まで導入したのです。しかし、東日本大震災によって原子力発電は火力発電に変わり、今は深夜電力を補うために、わざわざ輸入した資源を燃やして発電を続けています。これでは電気料金が値上がりしても不思議ではありません。これからの日本のエネルギー事情を考えると、もっと自由で新しい発想が必要でしょう。

電気料金は本来、使う人の多い日中が安くなり、人が使わない夜間に高くなります。しかし、安いはずの日中の電気を高く買い、深夜電力割引のメリットもないというのが現状です。原子力発電をベースにした料金体系が最善の選択か、見直しが必要です。