№42 いつ起こる? 南海トラフ巨大地震

本当に地震に強いのは耐震の家? 制振の家?

その災害はあなたの街でも発生する

日本は地震大国と言われています。南海トラフ巨大地震も、いつ起きても不思議でないと言われていますし、その他の地域でも大きな地震に備えておく危機意識は持つべきだと思います。大地震は、規模の大きな「本震」の前に「前震」と呼ばれる地震があり、本震の後には「余震」という地震があります。私は欲張りですから、これらの一連の地震にこだわった家づくりをしたいと考えています。

大地震に対応する家づくりの重要なポイントは、家の柔軟性です。堅牢なだけの家は、地震の時に棚の本や食器、鍋などが飛来し、壁のエアコンも凶器となります。なぜなら、家が地震のエネルギーと真っ向から喧嘩しているからです。

大切なのは家が地震に勝つことではなく、地震でも家族が安全であることです。その点では、揺れに耐える「耐震」だけでなく揺れを吸収して抑える「制振」を取り入れるべきなのです。私が推奨するのは、千博産業株式会社の「evoltz」という世界特許技術のダンパーです。わずか3mmの揺れから制振性能を発揮するため、家の中では地震があったことすら気が付きません。しかも、小さな揺れから制御することで「倒壊防止」のみならず「損傷防止」の効果も期待できます。

耐震等級の「倒壊防止」とは、建物が外観を維持できている状態で、建物内が重度の被災でも保険金額が減額されます。一方、耐震等級の「損傷防止」とは、建物内も外観も被災していない状態です。家づくりでは「損傷防止」の視点も大切にしてください。

№41 家に求められるレジリエンスという性能

被害が甚大化し続けている自然災害にどう対処するか

災害の時、あなたはどうする?

レジリエンス性能とは、家自体が問題を解決する能力のことです。家が直面する問題は多様です。自然災害に対する備えも家に求められる重要なレジリエンス性能といえます。昨今の自然災害は以前と同じような対策では通用しなくなっています。超大型の台風が甚大な被害を及ぼし、頻発する地震も周囲の環境に影響を与えています。2022年6月に埼玉県北部で発生した雹(ひょう)のように、まさに命に関わる災害が発生しているのです。

では、このような時、私たちはどうすればいいのでしょうか。曖昧な避難情報で外にでてしまうと、余計に被災する可能性があります。河川の氾濫や土砂災害に巻き込まれる危険性のある時は命を優先して避難すべきですが、頻発する自然災害に対しては家が避難所であるという発想の転換も必要だと思います。例えば台風や地震で地域が断水、停電した時に、自宅で水と電気を使い、普段通りに生活が出来れば便利だと思いませんか?。家が避難所として利用できる価値はさらに高まっていくでしょう。

マイホームを建てる時、通勤や通学、買い物の利便性、販売価格などから土地を選ぶ人が多いと思いますが、今後は、自分の住む場所の安全性を確認することが必須です。自治体のハザードマップなどで土地を見直す意識も持っていただきたいと思います。

№40 HEMSメーカーと新電力会社が同じ

VPP社会にもっとも賢く対応していくための選択

新電力をうまく活用する

FIP制度では、蓄電池やEV車に蓄えた電気の販売が可能になります。電気を売買する市場において、その電気が高いか安いかを判断する事業者のことを、リソースアグリゲータ(RA)と呼びます。私たちが実際に電気を売買する相手はこの事業者が市場での入札を行います。

HEMSにもさまざまな種類がありますが、全メーカーの設備に対応しているHEMSはありません。その中でも私がおススメするHEMSは、エコーネットライト規格(メーカー共通の通信規格)の電化設備であれば読み取りが可能です。

しかもメディオテック社は前述のダイレクトパワーの運営会社でもあり、一石二鳥のサービスが利用できています。電気のあるところから電気の足りないところへ、家同士がつながって大きな発電所のようになる、経産省がが推し進める仮想発電所VPP(バーチャルパワープラント)がまもなく始まります。進化する社会に対応し、貢献できる家こそが本物の価値のある家でしょう。

もし東北が豪雪となり、発電量が下がって停電しそうになった時、西日本の余った電気を家同士がつながりあう送電線(絆)で供給できれば、誰にとっても良い結果になります。VPPの取り組みは、日本全国のレジリエンスに備えるものでもあります。

№39 電気の見える化から制御の時代に

住宅内のすべての設備をAIで制御する

AIが電気を制御する家

電力を自給自足する家で暮らすには、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)という管理システムが不可欠です。電気の使用状況をモニターなどに表示して見える化し、さらには需給バランスを制御する役割があります。そして、このHEMSに制電力市場の電気と住宅設備を制御するクラウド上のAI(人口知能)を搭載すると、AIが電気を売買するタイミングを判断し、実際の売電の指令を自動で制御します。それはさながら証券市場の株取引のようです。

まず朝食の際の消費電力は蓄電池かEV車から出力します。そして家族が出かけた後でエコキュート(給湯器)による使うお湯を湯増しします。その後、蓄電池による使う電気を充電。EV車に充電する場合は、AIが蓄電量から運転手の走行距離を判断して充電します。それ以外にもEV車が自宅にある時は、スマートフォンからEV車の駐車時間を任意操作すればその時だけ充給電することも可能です。

HEMSに搭載したAIは、天気予想、当日、翌日の24時間の卸価格、設置した太陽光の発電量、蓄電池やEV車の空き容量などを読み取り、その時の発電量と蓄電量、電気料金と売電価格から電気を売るべきか、買うべきか、賢い使い方を判断します。

№38 食事をしながらEV車に充電する暮らし

FIP制度のスタートで社会は大きく変わる

電気を安く買って高く売る

№37でお話ししたように、EV車はガソリン車と役割が異なり、蓄電するための設備として重宝されるようになります。充電も通常は自宅で行うのが当たり前で、遠出した時だけEVステーションを利用することになります。また、ビジネスホテルや大手のスーパーではすでにEVステーションを設置している施設も登場しています。買い物をしながら充電、食事をしながら充電という日常は、もうそこまできているのです。

これからFIP制度が始まると、EV車を取り巻く環境はさらに変化します。本企業はカーボンニュートラル社会に貢献するため、会社や工場にもEVステーションを設置するでしょう。そうなれば、会社で仕事をしていう間に自分の車に充電し、家に帰ってから使えるようになります。そして、充電した電気を給電する環境のない家は価値がなくなるのです。

EV車は自宅の太陽光発電から充電できるだけでなく、日本卸電力取引所で販売価格の安い時間帯の電気を買って充電することもできます。反対に電気の逼迫する夜間の時間帯に貯めた電気を高く売ることも可能になります。FIPによって電力の自由化が進み、電気は使い方次第で利益を生む大切な資産になるのです。

電力を自給自足できる家に住み、自分で創った電気を自分で販売する人を「プロシューマー」と呼びます。金持ち父さんの家づくりをするなら、プロシューマーを目指しましょう。家が創る資源を有効活用することで、家自体の価値も上がります。