№44 基礎部分は絶体穴を開けてはいけない

大雨による浸水被害から家を守るためにできること

「穴」から始まるリスクを防げ

№8~№24で紹介した換気システム「エクリア」に出会うまでは私自身、家の基礎部分の外側に、給気・排気用の穴を2カ所開ける換気ユニットを採用していました。しかし、西日本豪雨で被災した家を視察した時、「これでは、ダメだ!」と愕然としました。室内に入った途端、冷蔵庫が水に浮かんでいる姿が目に飛び込んできたのです。浸水の程度はそれほどの水位ではなかったものの、1階は泥水が入り全滅でした。

その原因は基礎部分に開けた2つの穴です。そこから入った泥水が床の上にあがり、手もつけられないような大惨事となったのです。また、大阪府北部地震の際、高槻市の被災住宅ではこの穴が原因で基礎にクラック(割れ目)が入り、基礎部分が大きく損傷しました。どちらも基礎部分に穴がなければ、このような被害はなかったかもしれません。

過去に経験したことのない長雨で河川が氾濫し、予想もしなかった地域が被災するニュースが続いています。マイホームを考える時には、こうした災害が起こりえる時代に生きていることを忘れないでください。外観のデザインや間取り、内装などこだわりはたくさんあるでしょうが、まず優先していただきたいのは、自分たちの命と暮らしを守れるかどうかでしょう。

ニュースなどの映像をみているだけではわかりませんが、現地に行って思い知らされるのは、被災後の悪臭です。下水や生活排水も含んだ汚水や汚泥に浸かるとそのまま使用するのは難しくなります。とにかく家の中に侵入させないことが一番です。

№43 窓サッシを耐震性能から考える

大地震でも避難できる窓サッシ

暑さ2.5mmの分厚いサッシ

2018年6月の発生した大阪府北部地震で、高槻市の被災者宅を視察しました。自身の揺れで掃き出し窓が傾き、窓から避難できなかったそうです。このお宅はアルミの窓サッシでした。万が一に備えて外壁に取り付ける窓サッシにも頑丈さが求められているのです。

施主である皆さんは、キッチンやお風呂は色々な希望をだして選ぶのに、なぜか窓は工務店の言われるままに決めてしまいがちです。№8~№24でもお伝えしたように家の開口部である窓は外気を住宅内に入れないばかりか、温めたり冷やしたりした熱を外に逃がさない重要な役割も担っています。そして、気密・断熱性能と同様に、地震というレジリエンスにどう対処できるかも大切なのです。

私がおススメするサッシは、株式会社エクセルシャノン製のものだけです。フレームはアルミでなく樹脂製で、2.5mm以上の厚みで成形されているため、変形しにくいという強みがあります。ちなみに、この窓サッシは南極の昭和基地や富士山8合目の白雪荘、防衛相の防音工事に採用されています。シャノンという名は「遮音」「遮温」から名付けられました。サッシの強度だけではなく、家の中を静かに快適な環境に保つことにも貢献しています。

エクセルシャノン社のサッシは、地震の揺れで歪みにくいだけでなく、耐風圧試験や突風のあおり試験など、さまざまな性能確認がされています。南極の昭和基地や富士山8合目の山小屋など、厳しい環境にある施設で利用されているのもうなずけます。

●エクセルシャノンのトリプル樹脂サッシ

窓は壁の面積の大きな部分を占めています。光を取り入れる役割だけでなく家を守る役割も担ってもらいましょう。エクセルシャノン社のサッシは、樹脂製の厚いフレームで成形されており、地震の揺れでフレームが歪んで窓が開かないという事態が起こりにくいのです。

№42 いつ起こる? 南海トラフ巨大地震

本当に地震に強いのは耐震の家? 制振の家?

その災害はあなたの街でも発生する

日本は地震大国と言われています。南海トラフ巨大地震も、いつ起きても不思議でないと言われていますし、その他の地域でも大きな地震に備えておく危機意識は持つべきだと思います。大地震は、規模の大きな「本震」の前に「前震」と呼ばれる地震があり、本震の後には「余震」という地震があります。私は欲張りですから、これらの一連の地震にこだわった家づくりをしたいと考えています。

大地震に対応する家づくりの重要なポイントは、家の柔軟性です。堅牢なだけの家は、地震の時に棚の本や食器、鍋などが飛来し、壁のエアコンも凶器となります。なぜなら、家が地震のエネルギーと真っ向から喧嘩しているからです。

大切なのは家が地震に勝つことではなく、地震でも家族が安全であることです。その点では、揺れに耐える「耐震」だけでなく揺れを吸収して抑える「制振」を取り入れるべきなのです。私が推奨するのは、千博産業株式会社の「evoltz」という世界特許技術のダンパーです。わずか3mmの揺れから制振性能を発揮するため、家の中では地震があったことすら気が付きません。しかも、小さな揺れから制御することで「倒壊防止」のみならず「損傷防止」の効果も期待できます。

耐震等級の「倒壊防止」とは、建物が外観を維持できている状態で、建物内が重度の被災でも保険金額が減額されます。一方、耐震等級の「損傷防止」とは、建物内も外観も被災していない状態です。家づくりでは「損傷防止」の視点も大切にしてください。

№41 家に求められるレジリエンスという性能

被害が甚大化し続けている自然災害にどう対処するか

災害の時、あなたはどうする?

レジリエンス性能とは、家自体が問題を解決する能力のことです。家が直面する問題は多様です。自然災害に対する備えも家に求められる重要なレジリエンス性能といえます。昨今の自然災害は以前と同じような対策では通用しなくなっています。超大型の台風が甚大な被害を及ぼし、頻発する地震も周囲の環境に影響を与えています。2022年6月に埼玉県北部で発生した雹(ひょう)のように、まさに命に関わる災害が発生しているのです。

では、このような時、私たちはどうすればいいのでしょうか。曖昧な避難情報で外にでてしまうと、余計に被災する可能性があります。河川の氾濫や土砂災害に巻き込まれる危険性のある時は命を優先して避難すべきですが、頻発する自然災害に対しては家が避難所であるという発想の転換も必要だと思います。例えば台風や地震で地域が断水、停電した時に、自宅で水と電気を使い、普段通りに生活が出来れば便利だと思いませんか?。家が避難所として利用できる価値はさらに高まっていくでしょう。

マイホームを建てる時、通勤や通学、買い物の利便性、販売価格などから土地を選ぶ人が多いと思いますが、今後は、自分の住む場所の安全性を確認することが必須です。自治体のハザードマップなどで土地を見直す意識も持っていただきたいと思います。

№40 HEMSメーカーと新電力会社が同じ

VPP社会にもっとも賢く対応していくための選択

新電力をうまく活用する

FIP制度では、蓄電池やEV車に蓄えた電気の販売が可能になります。電気を売買する市場において、その電気が高いか安いかを判断する事業者のことを、リソースアグリゲータ(RA)と呼びます。私たちが実際に電気を売買する相手はこの事業者が市場での入札を行います。

HEMSにもさまざまな種類がありますが、全メーカーの設備に対応しているHEMSはありません。その中でも私がおススメするHEMSは、エコーネットライト規格(メーカー共通の通信規格)の電化設備であれば読み取りが可能です。

しかもメディオテック社は前述のダイレクトパワーの運営会社でもあり、一石二鳥のサービスが利用できています。電気のあるところから電気の足りないところへ、家同士がつながって大きな発電所のようになる、経産省がが推し進める仮想発電所VPP(バーチャルパワープラント)がまもなく始まります。進化する社会に対応し、貢献できる家こそが本物の価値のある家でしょう。

もし東北が豪雪となり、発電量が下がって停電しそうになった時、西日本の余った電気を家同士がつながりあう送電線(絆)で供給できれば、誰にとっても良い結果になります。VPPの取り組みは、日本全国のレジリエンスに備えるものでもあります。

№39 電気の見える化から制御の時代に

住宅内のすべての設備をAIで制御する

AIが電気を制御する家

電力を自給自足する家で暮らすには、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)という管理システムが不可欠です。電気の使用状況をモニターなどに表示して見える化し、さらには需給バランスを制御する役割があります。そして、このHEMSに制電力市場の電気と住宅設備を制御するクラウド上のAI(人口知能)を搭載すると、AIが電気を売買するタイミングを判断し、実際の売電の指令を自動で制御します。それはさながら証券市場の株取引のようです。

まず朝食の際の消費電力は蓄電池かEV車から出力します。そして家族が出かけた後でエコキュート(給湯器)による使うお湯を湯増しします。その後、蓄電池による使う電気を充電。EV車に充電する場合は、AIが蓄電量から運転手の走行距離を判断して充電します。それ以外にもEV車が自宅にある時は、スマートフォンからEV車の駐車時間を任意操作すればその時だけ充給電することも可能です。

HEMSに搭載したAIは、天気予想、当日、翌日の24時間の卸価格、設置した太陽光の発電量、蓄電池やEV車の空き容量などを読み取り、その時の発電量と蓄電量、電気料金と売電価格から電気を売るべきか、買うべきか、賢い使い方を判断します。

№38 食事をしながらEV車に充電する暮らし

FIP制度のスタートで社会は大きく変わる

電気を安く買って高く売る

№37でお話ししたように、EV車はガソリン車と役割が異なり、蓄電するための設備として重宝されるようになります。充電も通常は自宅で行うのが当たり前で、遠出した時だけEVステーションを利用することになります。また、ビジネスホテルや大手のスーパーではすでにEVステーションを設置している施設も登場しています。買い物をしながら充電、食事をしながら充電という日常は、もうそこまできているのです。

これからFIP制度が始まると、EV車を取り巻く環境はさらに変化します。本企業はカーボンニュートラル社会に貢献するため、会社や工場にもEVステーションを設置するでしょう。そうなれば、会社で仕事をしていう間に自分の車に充電し、家に帰ってから使えるようになります。そして、充電した電気を給電する環境のない家は価値がなくなるのです。

EV車は自宅の太陽光発電から充電できるだけでなく、日本卸電力取引所で販売価格の安い時間帯の電気を買って充電することもできます。反対に電気の逼迫する夜間の時間帯に貯めた電気を高く売ることも可能になります。FIPによって電力の自由化が進み、電気は使い方次第で利益を生む大切な資産になるのです。

電力を自給自足できる家に住み、自分で創った電気を自分で販売する人を「プロシューマー」と呼びます。金持ち父さんの家づくりをするなら、プロシューマーを目指しましょう。家が創る資源を有効活用することで、家自体の価値も上がります。

№37 EV車を家の電源すると便利に暮らせる

EV車の6kwhの大電力で、電気を自給自足する

6kwの大電力って、すごい!

自宅の太陽光発電で創った電気を、蓄電池やEV車に貯め、家で使う電気を自給自足する。特にEV車を活用することをおすすめするのには理由があります。

蓄電という視点で見たとき、蓄電池とEV車の大きな違いは、最大出力と大量の充電量です。蓄電池の最大出力は3kwまで。それに比べてもEV車は最大6kwまで出力できます。これを家庭で利用する電気で考えてみるとIHクッキングヒーターは、通常は1つのトッププレートの電気使用量が1.5kwほどで、左右両方を使えば3kwを消費します。

太陽光発電が利用できない夜間の場合、蓄電池1台ではここまでしか使えません。一方、EV車の場合は6kwですからIHクッキングヒーターと同時に電子レンジ1.5kw、お風呂あがりのドライヤー1.2kwを使っても電気を買わずにすみます。

ちなみに、一般的な家庭が契約する電気料金の電圧は100Vがほとんどですが、最近の高性能な家電は電圧が200Vでないと使えないものもあります。一般家庭では電気の契約アンペア数が40A以上でないと200Vが使用できません。電気設備を選ぶ際は、契約内容を確認し、利用状況に応じた変更が必要です。

電化製品などでよく見るA(アンペア)V(ボルト)W(ワット)は電気を表す単位です。Aは電流(一度に電気が流れる量)Vは電圧(電気を押し出す強さ)Wは1秒間当たりに消費される電力の大きさを表しています。

№36 金持ち父さんがEV車に乗る理由

EV車の所有で電気を有効利用する

EV車の役割が変わる?

もし金持ち父さんが車を所有するなら、絶対にEV車(電気自動車)です。なぜならEV車はこの先、住宅にとって必要不可欠になるからです。

よく「EV車とガソリン車、どちらがいいか」といった比較をする人がいますが、私からするとこの比較自体が間違いです。そもそも役割が違うのです。ガソリン車は遠くへ行くことを考えた移動手段。いわゆる交通車です。一方、EV車は蓄電されたエネルギーを使った移動手段というよりも、車に蓄えたエネルギーを使った移動以外に有効利用できる生活必需設備としての役割が大きいものなのです。

ガソリン車はスタンドで給油した後は、走行に消費するだけです。そのガソリンを自宅で他のものに給油することはないでしょう。しかし、EV車の場合は、自宅で発電し、自宅で消費することができます。この役割の違いを理解すれば「EV車は街中に充電できる場所が少ない」「走行距離がガソリン車に比べて短い」などという考えも意味がないことがわかるでしょう。EV車はマイホームで使用する電気を自給自足するための大きな蓄電池のようなものです。今後雄、貯めた電気が売れるようになれば、家の資産価値を高めるものとして、さらに存在感を増すことになります。

№35 新たな資産形成ができるFIP制度

電気を日中にしか売れない家、夜に高額で売れる家

FIT制度とFIP制度の違い

JEPX日本卸電力取引所は、電気の売買が行える国内唯一の市場です。JEPXでは、発電事業者による電力の供給と小売業者の予測する電力の需要のバランス調整が行われ、一般家庭で発電した電気も、小売業者を通して市場で売買できます。市場全体で同時同量の原則に対応できるように調整するわけです。現在のJEPXは不安定ですが、長期的に考えれば新たな需給バランスを構築する機会とも言えます。

これまで一般家庭が電気を売るときに利用してきた固定価格買取制度(FIT)は日中に発電した電気を自家消費し、余った分を売るため、日中の電気の需要が多い時しか売れません。晴天時に電気が余るのは家庭も同じなので電力会社ん電気が余り、買い取ってもらえないこともあるのです。電力会社の電気が逼迫するのは夜、暑い日、寒い日など、発電出来ないときや家庭の消費電力が増える時です。この状況を改善するため、国は新たにFIPという制度を導入する予定です。FIPの場合、日中に自宅で創った電気を蓄電池やEV車に貯め、市場の電気が不足している時間に売ることも可能です。今後はEV車が普及し、各家庭の所有数する電力量が増えます。そして、エネルギーの需給バランスが逼迫する電力会社を救済します。

FIP制度は、「フィードインプレミアム(Feed in Premium)」の略で、電気を売買する際に、市場価格に一定の補助額(プレミアム)を上乗せすることで、再生可能エネルギーの普及を支援していくという制度です。